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ヤシの種割り
Nut-crackingボッソウのチンパンジーはアブラヤシの種(Elaeis guineensis)を叩き割るために、ふたつの石をそれぞれハンマーと台にして使うことが知られています。野生で見られる道具使用行動の中では、ヤシの種割りはおそらく最も洗練された行動といえるでしょう。両手を使い別々の異なる動きをしなければならないという点で、現在までに知られている他の道具使用行動とは異なっています。
    
          メスのチンパンジー"ジレ"が石を使って種を割ろうとしています。自分に合う石を手に取って、慎重に道具を決めました。
    
          台の表面が水平になっていないと、ヤシの種が転がっていってしまいます。ヤシの種を何度も置き換えたり、台を移動させたりして工夫します。
    
          チンパンジーにも利き手があります。ジレは左利きです。ハンマーを左手に持ち、台の上に置いたヤシの種めがけて振り下ろしました。
    
          熟練すると1、2回振り下ろすだけでヤシの種が割れ、なかの白い核を食べることができます。
    
          
          ジレも食べることができました。白い中身はココナッツの味がして、とても栄養があります。5歳までに上手くヤシの種割りを学べないと、大人になってもヤシの種が割れないことがわかっています。
1歳になったジョヤもお母さんの仕草をじっと観察しています。
上級編
          カイ(2003年死亡)という年寄りのチンパンジーは、台石の下に別の石を"かませて"、ヤシの実を割りました。こうすると、台石の表面が平行になってヤシの実が転がりません。道具の機能を向上させるために道具を使った例です。
          松沢らは、より詳しくヤシの実割り行動を観察するために、調査地の中に野外観察場を作りました。
          (Sakura 
          & Matsuzawa, 1991; Matsuzawa, 1991,1994, 1999; Fushimi et al, 1991; 
          Sugiyama et al, 1993, Inoue-Nakamura & Matsuzawa, 1997)。
          観察場はチンパンジーの遊動域の中心にある丘の上に作られ、石やヤシの実を人為的に配置することで、チンパンジーの行動を詳しくビデオで記録することができるようになりました。つまり、"野外の実験場"が作られたのです。
        


